みなさまこんにちは。
ゴールデンウィーク真っただ中ですがいかがお過ごしでしょうか。私はカレンダー通りの休みなのであっという間に過ぎてしまうんだろうなあと。早くもクルマの温度計が30度超を示していますので、308SWの革ハンドルが溶けてしまわないように気をつけなければなりません。
さて、こんなニュースが飛び込んできました。なんと、プジョーが北米への再進出を検討しているというのです。
Peugeot Ponders Return to the U.S. Market
http://www.edmunds.com/car-news/peugeot-ponders-return-to-the-us-market.html
– Edmunds –
Peugeot Purportedly Planning to Come Back to the USA
http://www.carscoops.com/2014/04/peugeot-purportedly-planning-to-come.html
– Carscoops –
Edmundの記事によると、カルロス・タバレスCEOは、PSAが今後10年以内にアメリカへの再進出を検討しており、プジョーだけでなく、シトロエンとシトロエンから独立したブランドとなるDSの上市も検討していることを認めたそうです。
ただし、現在進行中の再生プラン「Back in the race」には北米市場への復帰は含まれていません。まずはこの計画の進捗を見極め、2017年から18年ごろになってから具体的に検討するということのようです。
なお、北米はフランス車にとって不毛の地でありまして、プジョー・シトロエンだけでなく、ルノーも販路を持っておりません。3社とも北米に進出していたものの、プジョーは1991年、ルノーは1992年、そしてシトロエンはそれより20年近く前の1974年に撤退しております。
撤退した理由はさまざま言われておりますが、「品質が悪かった」「サービス体制が整っていなかった」「日本車との価格競争に勝てなかった」というのが主な理由だそうです。
Why Aren’t French Cars Sold in America?
http://www.french-cars-in-america.com/2013/11/why-aren-t-french-cars-sold-in-america.html
– French Cars in America.com –
そうはいっても、アメリカ合衆国だけでも乗用車とライトトラック合わせて年間1,500万台の市場規模ですから、一度撤退したとはいえ放っておくのは得策ではありません。ここで乗用車700万台のシェアの1%でも取れれば 7万台となり、PSAの販売規模の拡大に大きく寄与します。また、現在の欧州に偏った販売網を分散することでリスクヘッジにもつながります。
とはいえ、プジョーとシトロエンが北米市場で一定の地位を築くためには多くの課題を克服しなければなりません。
最大の課題はPSAグループの資金力です。確かに資金は必要ですが、金があれば成功するというものでもありませんので、北米進出のためのある程度の資金は確保できたという前提で話を進めます。
そもそもアメリカで欧州車が受け入れられるのでしょうか。メルセデスやBMWなどの高級ブランドは別として、欧州の大衆車ブランドでまともに販売されているのはフォルクスワーゲンとフィアットだけです。欧州でトップシェアのフォルクスワーゲンはアメリカでは年間40万台でシェアは2.6%。フィアットは4万3千台でシェア0.3%です。アメリカは世界中の自動車メーカーがひしめく市場ですから厳しいですねー。
フィアットの数字をどう捉えるか。Bセグ車しかないフィアットですら4万台も売れているとみるか、クライスラーという強力なパートナーシップがあってなお4万台しか売れていないとみるか。まあ、フィアット500が3万台以上売れるということは、だだっ広いアメリカの一部にも、Bセグクラスの小さなクルマが好まれるマーケットがあるのかもしれませんね。都市部とか?ちょっとわかりませんけどね。でもフィアットが4万台売れるなら、プジョーが10万台くらい売れてもおかしくないとは思います。
そのためには、とにもかくにも北米で売れる車種を取り揃えなければ何も始まりません。なお、アメリカで一番売れている自動車はフォードのFシリーズです。
これですね。

うーん、アメリカン。アメリカのモデル別販売ランキングの1位、2位、6位はピックアップです。これはちょっとPSAには作れませんね。
2013 U.S. Vehicle Sales Rankings By Model
http://www.goodcarbadcar.net/2014/01/usa-vehicle-sales-rankings-by-model-december-2013-year-end.html?m=1
– Focustomove.com –
乗用車系だと2013年の販売台数トップはトヨタのカムリ。そこにホンダのアコードや日産のアルティマが続きます。各メーカーとも売れ筋はCセグよりDセグ、ハッチバックよりセダンという傾向です。2013年の販売実績でみると、トヨタはカローラ/マトリックスの30万台に対してカムリが40万台。ホンダはシビックの33万台に対してアコードが36万台。フォードはフォーカスが23万台に対してフュージョンが29万台です。フォルクスワーゲンもアメリカではジェッタ16万台、パサート11万台に対して、ゴルフは3万台しか売れていません。ジェッタがゴルフの5倍売れる市場です。
こちら、トヨタの北米版カムリです。

photo: Cars.com
したがってプジョーの場合、現在のラインナップで考えると、北米の主力車種は508セダンということですね。次が3008と308でしょうか。あとRCZか。うーん、4車種ではちょっと寂しいですが、208や5008は難しいんじゃないでしょうか。308もハッチバックではなく、新興国のみで売っている308セダンや408の方が北米市場で受け入れられるのかもしれません。その場合でも、当然商品を北米仕立てに変える必要はあります。
プジョー308セダン。こちらですね。

photo: wikipedia
そして最後は「誰がやるのか」という組織的な問題です。プジョーはすでに北米の撤退から20年以上経っていますから、社内に北米市場がわかる人材はいないと思います。そのためどこかから人を引き抜かなければなりません。
北米市場を知り抜いていて、かつフランス本社とコミュニケーションが取れる人物。例えばルノー出身のフランス人で北米日産に出向していた人とか。そんな都合のよい人がゴロゴロ転がっているとは思えませんが。
当然責任者だけ引き抜いてもだめですね。現地のオペレーションはアメリカ人に任せるとしても、本社サイドでも製品企画や設計から品質保証まで北米対応が必要です。北米の安全基準への適応は当然のことながら、北米マーケットの好みにあった商品企画も必要です。いまのPSAの社内にはこれができる人はおそらくほとんどいないでしょうから、体制を整えて組織が機能するようになるまでには長い時間とエネルギーが必要でしょう。
ということで、PSAの北米再進出はなかなか課題山積で、一筋縄では行かないことは火を見るよりも明らかなのですが、頑張っていただきたいですね。

プジョー508がアメリカのハイウェイを疾走する姿は、果たして見られるのでしょうか?
