みなさまこんにちは。
さて、運転歴およそ30年、5代目の所有車にして初の新車、初のドイツ車となった、メルセデス・ベンツGLB 200dの納車から1年が経過しました。
走行距離は10,000kmを超えましたが、前車プジョー308SWでは年間5〜6,000km程度だったので、電車通勤+テレワークのサンデードライバーとしては、なかなか走った方かと思います。
細かなトラブルはいくつかありましたが、現在進行形で一番の課題は、ステアリングの左流れです。2ヶ月ほど前に、走行中にふとステアリングのセンターが左にズレていることに気がつきました。
GLBをはじめメルセデスのステアリングコラムには、左にウインカーレバー、右にシフトレバーが並行についています。そのラインにパドルシフトのレバーを重ねてみると、明らかに左にズレているのが分かります。

センターのずれた(状態を再現した)我がGLBのステアリング。ぴえん。
普段は幹線道路ではできる限りACCを使っており、全速度域でアクティブステアリングアシストが、時速60km以上ではさらにレーンキープアシストが作動するため、あまり気がつく機会がありませんでした。
しかし、ACCオフでステアリングアシストがない状態で走っていると、ふと右手の親指をスポークに乗せていることに気がついたのです。あれ、なんか右腕ツラくね?そして、直進道路でステアリングから力を抜くと、スーッと左に流れて行くような行かないような……
原因として考えられるのは、ステアリングホイールだけがズレている(前輪は直進方向を向いている)か、アライメントがズレて、前輪舵角自体が左に寄っているかどちらかでしょうか。でも右手に力をかけているということはアライメント…?
ハンドル流れの原因はアライメント…?
新車のベンツがわずか1年でこんな症状が出るとは少し不安になりますが、ちょうど1年点検のタイミングだったので、ディーラーの担当営業氏に問い合わせると「車両が流れるということは、アライメントですかね…」ということで、一旦お預けしました。
が、結論はアライメントは正常(タイヤももちろん異常なし)で、「ステアリングホイールのズレ」ということで、ステアリングが調整されて戻ってきました。いやーよかった。これで一件落着です。
が、これで終わればわざわざブログに書くような内容にはなりません。
戻ってきた車で、ステアリングアシストオフで運転してみると、ん…?なんか入庫前より症状が強くなってないか…?
症状を確認するため、運転支援機能を全てオフにして走ってみます。アクティブステアリングアシストも、LKAも、ESCも全部オフにして、同じ道路をさまざまな速度で繰り返し走行してみます。うーむ、なるほど。
症状をまとめるとこうです。まず、停止時は基本的にはステアリングは正面を向いています。アクセルを踏んで発進すると、ステアリングは優しく手を添えるだけでも、直進しています。
しかし、40〜50km/h程度でアクセルを離すと、ステアリングがわずかに左に切れ込むのをはっきりと感じます。左に「スッと抜ける」という表現の方が適切かもしれません。ステアリングをしっかりと握っていれば気がつかないかもしれませんが、舵角を右に修正しないと車線をはみ出してしまうほどの確度です。
アクセルオフでハンドルが左に切れるということは、荷重が車両の前方に移動することで、フロントサスペンションに負荷がかかり、ジオメトリーが変化して、結果としてステアリングが僅かに左を向く。そんなところでしょうか。
しかし、今時の新車でそんなことあるかね?昔のプジョー106なんかは赤信号で停止する直前に路面の凹凸を拾うと、ハンドルがガクンと左に取られることがありましたが、泣く子も黙る2020年代のベンツですよ。それに、新車の時からこんな症状出てたかなあ。出てたら気づくような気もするが……
いずれにせよ、再度ディーラーに預けるしかありません。営業担当氏に症状について話すと、今度は整備士の同乗のもとで、一緒に症状を確認させてほしいということでした。
ということで、平日の夕方に少し早めに仕事を切り上げて、ディーラーに向かいます。なんだかんだいって近所にあるのはいいですね。メカニック氏が私の車のハンドルを握り、私は助手席に座ります。
自分の車の助手席に乗って他の人に運転してもらうなんて初めてです。GLB、助手席もなかなかいいなあ。いつもの試乗路を何周かしながら、確かに時速30〜50km程度の速度まで加速した後にアクセルペダルから足を離すと左に流れるという症状を確認してもらうことができました。さすが話が早い。
同乗中にメカ氏から面白い話を聞くことができました。なんでも、最近の車は常にEPS(電動パワステ)などのシステムがステアリングの直進状態を監視していて、車両の姿勢変化などを認識しながらステアリングのセンターを制御しているそうなのです。
えっ、そうなんですか?ステアリングアシストがオフでも?
そうなんです。我がGLBを含む現行のメルセデス車では、ACC作動時やLKA使用時にステアリングアシストが働きますが、この機能がオフの状態でも、常にシステムが介入して「センター出し」を行なっているということなのです。
なんと、車が「まっすぐ走る」のは、今やタイヤやサスペンションの向きなどのメカだけではなく、プログラムが制御してまっすぐ走らせている、ということなんですよ。
さらに、販売店レベルではソフトウェアの仕様の詳細は不明ながら、メルセデスのEPSには学習機能が備わっていて、ステアリングセンターの値をアップデートしていくということです。過去の別の車種でハンドル流れが発生した車両では、この学習機能をリセットしたところ治ったという例もあったそうです。
はえー、自分の車がそんな仕組みになっていたなんて全然知りませんでした。エンジニアの方と会話すると面白いですね。
ステアリング制御の仕組みについて、もう少し深掘りしてみたくなりました。技術的には「舵角中点」と呼ぶそうです。この舵角中点の制御技術に関する解説記事を探しましたが、メーカーの技報や特許情報くらいしか見つかりませんでした。
ちょっと長いですが、ホンダとスバルのEPS関連の特許情報をご紹介します。(太字は筆者)
舵角中点学習方法(ホンダ)
「運転者の操舵力を軽減する電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)装置を備える車両が知られており、このような車両には、EPSを制御するためのEPSECU(Electronic Control Unit)が備わっている。
また、ABSやTCS(Traction Control System)を組み合わせて車両の挙動を制御するVSA(Vehicle Stability Assist)が備わる場合、車両には、車両の挙動を制御するためのVSAECUが備わっている。EPSECUは、車両の進行状態(旋回、直進)や車速など、車両の挙動に応じてEPSを制御し、補助操舵力を発生して運転者の操舵力を軽減するとともに、操向ハンドルの舵角に応じて反力制御(操向ハンドルの操作に対する反力を付与する制御)を実行している。
(中略)そして、車両の旋回を検出するため、車両挙動検出システムには、車両の挙動を検出するセンサとしてのヨーレートセンサや舵角センサが備わっている。
舵角センサとして、操向ハンドルの相対的な角度変化量を検出値とするセンサ(例えば、ロータリエンコーダ)を用いる場合がある。この場合、EPSECUは、例えば操向ハンドルが中立位置(以下、舵角中点)にあるときを基準点として、基準点からの角度変化量によって操向ハンドルの舵角を算出できる。
そのため、EPSECUは、舵角中点を学習する必要がある。そして、舵角中点の学習には、ヨーレートセンサが検出するヨーレートが利用される。
そこで、舵角中点の学習の精度を向上するため、ヨーレートセンサには、ヨーレートを精度よく検出することが要求される。(中略) 例えば、特許文献1には、イグニッションスイッチがONされたときに、操向ハンドルの暫定中立位置を設定し、さらに、その後の車両の走行状態に応じて暫定中立位置を適宜補正することで、正確な中立位置(舵角中点)を学習する操舵角中立学習装置が開示されている。
(中略)ヨーレートセンサは、車両にヨーレートが発生していないときの検出値を基準値と決定して基準点を補正することができる。しかしながら、ヨーレートセンサの基準点を補正したときのヨーレートセンサの周囲温度と、EPSECUが舵角中点を学習するときのヨーレートセンサの周囲温度とが異なると、EPSECUが舵角中点を学習するときのヨーレートセンサの基準点が、ヨーレートセンサの基準点を補正したときの基準点と異なる場合があり、EPSECUが舵角中点を学習するときに、ヨーレートセンサがヨーレートを精度よく検出できなくなる。」
操舵角中点推定装置、及び、ステアリング装置 (スバル)
「自動車等の車両に設けられるステアリング装置は、操向輪(典型的には前輪)を電動モータ等のアクチュエータにより転舵するものである。
このようなステアリング装置において、例えば自動運転、車線維持支援などの運転支援、手動運転時における操舵角の戻し制御などを行う場合には、舵角制御の基準として、車両が直進する際の操舵角に相当する操舵角中点を適切に設定することが重要となる。(中略)車両が直線路を直進走行する際におけるハンドルの直進位置(舵角、ステアリングホイールの角度等)は、カント傾斜などの道路状況の影響、タイヤの摩耗状態、車両サスペンションのアライメント状態などにより変化するため、操舵角中点は逐次更新することが必要となる。
例えば、走行車線及び隣接する追越車線を有する片側2車線の道路において、車線幅方向で切ってみた路面の形状がいわゆるカマボコ型(車線幅中央が上方に張り出した凸面状)となっている場合には、車両が車線変更をした前後でカントの傾斜方向が逆向きとなる場合がある。このような場合には、車線変更の前後で同一の操舵角中点を適用した場合、車両の横流れ等の発生が懸念される。この場合、仮に車両が自動運転を行っている場合には、頻繁に修正舵を入れる必要があることから、車両のふらつきや乗員の不快感の原因となる。
なるほど、というほど理解できませんが、素人なりに解釈すると、舵角中点とは絶対的な前輪の向きではなく、車がまっすぐ走っている(=ヨーレートがゼロ=左右への重力加速度がゼロ)状態における前輪の相対的な向き、ということのようです。
言い換えれば、ソフトウェアがハードウェアを制御しながら車の直進状態を作り出しているということです。メルセデスが前述の特許情報の通りの制御を行っているかは分かりませんが、なんとなく、こういう制御をしているんだなあということが想像できるのではないでしょうか。
ということはですよ、サスペンションや操舵輪の向きなどが正しく、路面も平滑で機械的にはまっすぐ走るはずの状態であっても、システムが正しく制御できなければまっすぐ走らなくなる、ということなんですよ。
例えば、ヨーセンサーが認識した重力加速度が間違っているかもしれないし、ステアリングシャフトの舵角センサーが正しい角度の値を取得していないかもしれないし、センサー類は正常であっても、制御プログラムのバグで正しい値がセットされていないかもしれないし、プログラムは正しくても、なんらかの機械的な不具合によって、制御される側の部品が正しく動作していないのかもしれないのです。
メカさんに教えてもらった「EPSの学習機能の不具合」というのも、舵角中点を学習して更新するにしたがって、正しくないパラメーターが設定されていってしまったのかもしれません。
いやー、車をまっすぐ走らせるって大変なんですね。今時物知り顔で「フランス車はドイツ車よりも直進性が高いんだぜ」なんて言ったら笑われてしまいそうです。
ということで話がだいぶ逸れましたが、私のGLBのハンドル流れについては、EPSの学習機能をリセットしてもらい、しばらく様子見ということになりました。

で、結論から言うと治りませんでした。
一般道での感触は、入庫前とさほど変わりません。一度調整したステアリングセンターを元に戻したので、アクセルオフで左に流れる症状は緩和されたものの、治ったとは言えません。うーむ。
今度は高速道路で試してみることにしました。点検を行った近辺では忙しくて高速を走る機会がなかったのです。我がGLBの納車から丸1年で初めて、運転支援機能をすべてオフにして高速道路を走行します。
ACCにもLKAにも、BSMにさえも頼らない高速運転。いやー、緊張しますねえ。直線道路の走行車線で時速80kmまで速度を上げます。ステアリングの動きをつぶさに感じ取れるように両手で軽く保持し、後方に車両がいないことを確認した上で、アクセルペダルから足を離します。
すると、なんということでしょう!
何も起きません。アクセルを離すとハンドルがスッと左に抜けるような、あの挙動が一切ないのです。高速走行ではアクセルペダルのオンオフに関わらず、ステアリングはビシッと真正面を向いています。LKAは当然オフ。運転支援はまったく無しです。
これだ。これだよ。これが違和感のないまっすぐな走り。ステアリングアシストがなくても、これだけ真っ直ぐ走るんだ。
時速100kmで少し荒っぽくアクセルのオンオフを繰り返しても、まったく症状は出ない。強めにブレーキングしても(もちろん後方はしっかり確認)変わらない。これだけ姿勢を変化させても、ステアリングはブレずにまっすぐ前を向いたまま。乱されないからといって感覚が曖昧なのではなく、しっかりと操縦感覚も路面との接地感もある。これがベンツの凄いところじゃん。
今度は時速100kmからエンジンブレーキで減速してみる。90km/h。80km/h。まっすぐ走る。70km/h。まだまっすぐ。69、68、67、66…
スッ
(´・_・`)…………
あーーーー、65km/hくらいを境に、左に切れましたね。間違いない。ステアリングを握っていればそれ以上流れることはありませんが、LKAを切っているので、ハンドルを握る力を抜けば、左に流れて車線を逸脱します。
ここまで試せば、我がメルセデス・ベンツGLBのハンドル流れは、メカニカルな不具合ではなく、何らかの制御上の不具合である可能性が高いのではないかと感じました。
早速この症状をディーラーに伝えると、メルセデス・ベンツジャパンにエスカレーションしてくれ、MBJも検証すると言ってくれたそうです。後日聞いたところでは、今のところ私以外に同様の症状は上がってきていないということでした。
こうなると、待つしかありません。運転に支障が出るほどではないし、ADASをオンにしておけば症状を感知することはできませんが、かじ取り装置の問題ですからね。しかし、制御の問題となると、これを治すのも大変そうですね。
それからおよそ1ヶ月半ほど経過し、何もアップデートがないなあと思いディーラーに確認しましたが、やはり新たな情報はないということでした。
営「ところでとこさん、もしかして国交省の不具合情報サイトに今回の件アップされました?」
僕「あー、しましたしました。あれってメーカーに連絡行くんですか!?」
営「そうなんですよ。国交相からインポーターに『こんな不具合情報来てますよ』って通知されるんです。」
なんと、不具合情報サイトのことは以前から知っていて、アルファロメオのATが突然リバースに入るなどのとんでも不具合情報を閲覧したりして楽しんでいたのですが、本来は、自動車メーカーに適切なリコールや改善措置を促すためのプロセスの重要な一部だったんですね。
私も、ここに書いたらなんかいいことあるかなくらいの軽い気持ちで書き込みましたが、とりあえず改善のルートには乗ったと思われますので、結果を気長に待ちたいと思います。GLBのハンドル流れについては、みんカラ方面でも症状が出ている人がいると聞きましたので、不具合情報ホットラインにドシドシ情報をお寄せ頂きたいですね。
追記
みんカラで、MBUXでステアリングの舵角が表示ができるので確認してみては」とのご指摘を頂きました。
GLBのFFモデルには、4MATICに装備される勾配や傾きなどをリアルタイムで表示する「オフロードスクリーン」が装備されていません。そのため私は、MBUXの「車両情報」の「車両」の画面に、アクセル開度とブレーキ踏度が表示されるだけで、ステアリング角度は表示されないと思っていたんですよ。

MBUXの「車両」画面。右端にアクセル開度とブレーキ踏度を示すバーがあります。
そしたらなんとGLBの絵の右下にちっこく表示されているではありませんか。全然知らなかった…
ということで、前述のハンドル流れの状態で、この舵角計がどうなるか確認してみました。が、ハンドルがわずかに左に切れた状態でも表示は「0°」のままですね。
というか、ハンドルを10度ほど切ってはじめて「1°」になるんですよ。これは、ステアリングホイールの回転角度ではなく、前輪の切れ角なんですね。そのため、ロックまで切り込んでも数値は36度ほどです。

ステアリングを10度ほど傾けると、「1°」にかわります。

左全開に切ると35〜36度を示します。画面内のGLBもタイヤが左に切れていますが、全体的にこの画面の使い方が分かりません(´・_・`)
ということで、我がGLB、納車から1年以上経過してもなお、新たな気づきを与えてくれるのでした。(早く治らないかなあ)
追々記
続きもこちらに貼っておきます。
追々々記
治りました。
2023年8月にGLB200dから乗り換えたAMG GLB35でも同様のハンドル流れの症状が出ていましたが、2024年5月に発表されたリコール対策を適用したところ、症状は消えました。
リコールの内容は「パワーステアリングコントロールユニットのソフトウエアに関する対策」というもので、直接ハンドル流れに言及されているわけではありません。
正確な発表はないため、このリコールとハンドル流れの因果関係は不明ですが、まあ、おそらくこれで対策されたんでしょう。「ステアリングに振動が発生することで」とも書いてありますしね。


