マツダCX-60に試乗して「プレミアム」の意味をぼんやりと考える。

みなさまこんにちは。

早速ですが、全国的に絶賛話題沸騰中のあの車に試乗してきました。そうです。マツダの「ラージ商品群」第一弾のCX-60です。

思えば、前愛車プジョー308SWから現愛車メルセデス・ベンツGLBに乗り換える際、7人乗りのSUVとしてプジョー5008やマツダCX-8が候補に上がっておりました。結局CX-8には試乗もしなかったのですが、なぜだろう。なんでだっけ。

ともかく、何せ話題に事欠かないCX-60です。FRプラットフォームと直列6気筒エンジンに加えて、トルコンレスATまで新規開発し、マツダとして初の500万円を超える車両価格。「おい大丈夫なのか」と、車好き界隈が騒然としたことは記憶に新しいですね。

そして、実車がデビューして専門家のレビューも非常に盛り上がっております。曰く「なぜこんなに乗り心地が硬いのか」と。

なるほどそんなに硬いのなら一度試してみようかと、別にあずきバーというわけではないのですが、ぼんやりと我がメルセデス・ベンツGLBの次をどうしようかなとは考えいるのですよ。

えっ、「お前のGLBまだ買ったばかりじゃないのかよ」って?

はい。私のGLB、2021年2月登録なので初回車検は2024年2月なんですが、いま新車の納期が軒並み厳しいじゃないですか。

12ヶ月待ちもザラなんていう状況だと、24年2月の車検で乗り換えるとしたら、23の年明けにはもう発注しないといけない。現在2022年10月ですから、もう3〜4ヶ月しかないということです。えー。

まあ、私のGLBは5年保証に入ってるので別に3年で乗り換えなくてもいいんですが、「3年間無料」とされているあれやこれやがどうなるか、その辺も考えると、ねえ。

今回試乗したマツダCX-60は5人乗りですが、FRプラットフォームで3列シートのCX-80が2023年にも発表されると噂されております。そのためにいまCX-60に乗っておけば、いい勉強になるんじゃないかと。ということで、見ていきましょう。

1. 【内外装】シートは絶品かもしれない。

まずは内外装から。CX-60の外装は、都会的でハンサム。CX-5やCX-8より少しラギッドな(ゴツい)方に振ったようですが、良くも悪くもマツダの魂動デザインです。

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スッキリしたマツダのデザインに比べれば、ベンツやBMWのSUVはどことなく重苦しい印象であることは否定できません。少し前にGLBを「ドイツの田舎者風情」と評していたジャーナリストの方がいましたが、それもあながちイチャモンとも言えないでしょう。

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Aピラー付け根と前輪車軸の位置関係が、CX-60が間違いなく縦置きFRであるということを物語っています。「INLINE 6(直列6気筒)」とプレートを貼られると、そういや昔よく「DOHC」って書かれた車が走ってたなあということを思い出します。

ドアを開けて乗り込みます。「バシャン」と閉まるドアの音とともに、どこからか「そこは操安性には関係ない」という声が聞こえたような気がします。

内装の質感は、全然悪くないと思います。GLB(やその他メルセデスのコンパクトクラス)と比べると、ソフトパッドの表皮や加飾パーツの質感はメルセデスの方が良さそうだったり、一方でハードプラの質感はCX-60の方が良かったりとまちまちです。スイッチ類の操作感や節度感はほぼ同等かと。

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上: マツダCX-60の運転席
下: わがメルセデス・ベンツGLBの運転席

内装のセンスについては、GLBと比べればシャキッとした雰囲気のCX-60の方がいいという人もいるでしょうし、64色アンビエントライトにハイテク感のあるベンツの方がいいという人もいるでしょう。

なお、CX-60の内装で気に入ったのはシートです。第一印象はすごくいいです。前席も後席もたっぷりとしたサイズで、クッションがふっくらしています。前席の座面はベンツのコンパクトクラスより明らかにサイズが大きいですね。後席もGLBは硬く薄いので、座り心地だけを比べたら、100人中100人がCX-60の方が良いというのではないでしょうか。

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シフトレバーの左側にカップホルダーが位置する幅広なセンターコンソールは、1,890mmの全幅がなせる技。
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CX-60の後席エアコン。ファミリーとして欲しいのはシートヒーターよりも個別温度調節機能ですが、ここはコストの兼ね合いなのでしょう。もちろんGLBの後席にはシートヒーターすらありません。

2. 【試乗】話題の乗り心地。そういうことか…

それでは試乗へ。今回の試乗路は幹線道路をぐるっと一周して約5km。交通量もそれなりに多く、最高時速は60kmくらいでした。今回も試乗後にGLBで同じ道を通ったので、あくまでもそのレベルでの比較となります。

試乗車には自動的にシートポジションを調整してくれる「自動ドライビングポジションガイド」は非装備でした。電動シートと電動テレスコでポジションを調整します。

電動テレスコ、ステアリングヒーター、シートベンチレーション。この辺りはGLBをはじめベンツのコンパクトクラスにはつきません。

マツダ営業氏「えっ!?ベンツ、ステアリングヒーターないんですか!?」

僕「そうなんすよ。ステアヒーターは、Eクラスでも付かないですね。GLBはシートベンチもありません。」

営「そうなんですね!それは冬にいい営業トークになりそうです!」

どうぞどうぞ。そうやって「ステアヒーターのないベンツなぞ誰が買うものか」という消費者が増えれば、いつかベンツの日本仕様にもステアヒーターが装備されるようになるかもしれません。

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CX-60には、ステアリングヒーター、シートヒーターにシートベンチレーションが完備されています。(グレードによる)


店舗から片側2車線の幹線道路に出てアクセルを踏み込みます。話題の直列6気筒ディーゼルエンジンのきめ細やかで粒の細かなサウンドはいいですね。静粛性も、ディーゼル車としてはかなり静かな方ではないでしょうか。マイルドハイブリッドのモーターが仕事をしているのかどうかは、短時間の試乗では確認することはできませんでした。

そしてこちらも話題のトルコンレス8速AT。ダイレクト感が強いかいうと、言われてみればそうかもしれません。1〜3速のシフトショックはメルセデスのDCTより明らかに強めです。これも短時間の試乗で良さが分かるようなものではなさそうですね。

乗り心地は、一般道を流す限りはボディは終始フラットです。我がGLBがどちらかというと船のように上屋をゆったりと揺らしながら進むのに対し、CX-60はピシッと身じろぎひとつしない印象です。SUVに特有のふわふわ感や加減速に伴うノーズアップ・ノーズダイブも極力抑えられていて、運転好きには好ましい特性ではないでしょうか。

「でも、脚が硬いんだろ」って?

うーん、CX-60のサスは「硬い硬い」と評判なので身構えて乗ったのですが、私は決して硬いとは思いませんでした。

幹線道路で50〜60km/hで流している限りは、ビシッと引き締まったような入力は感じません。何と比較するかにもよりますが、少なくとも私のGLBより硬いとも柔らかいとも思いませんでした。

CX-60の乗り心地の問題は30km/h以下の低速域です。なんだろう、このプルプルゆさゆさが収まらない感じ。路面状態のあまりよくない場所をゆっくり進むような場面では、ボディがプルプルと細かく揺さぶられるような振動が絶えず入ってきます。

路面が荒れているんだから、揺さぶられるのは当たり前といえば当たり前なのですが、同じ場所をGLBで通ってみると、ゆらんゆらんと揺すられながらも、サスがよく働いて振動を吸収していきます。

それがCX-60では、運転手の頭は揺れないけど、腰から下は常にプルプルと振動が収まらない感じなのです。「硬い」というよりは、「荒い」と表現した方が的確かもしれません。うーん、これはちょっとしんどいな。

僕「硬いとは思いませんが、このプルプル感は、正直気になりますね。」

営「そうなんですよね。タイヤが20インチだからなのかもしれませんが、それ以前に小さな入力を減衰し切れていないというか」

僕「でもなぜ低速だけ顕著なんでしょうね。CX-5とかもこんな感じなんですか?」

営「いえ、マツダなので乗り味は似ていますが、ここまでではないですね。」

僕「うーん。これ年次改良で変わるといいですね。」

営「そうですね。これはさすがに直してくるかもしれません。」

先に触れた通り、CX-60の乗り心地の荒さは、速度が50km/h程度まで上がれば全く気になりません。GLBに戻ると「あっ、SUVってこんなに揺れるんだ…」とすら感じます。

いや、分かるんですよ。重くて背の高いSUVが道路の窪みで沈み込んだ時の「バイ〜ン」とか、うねりを乗り越えた時の「ボヨ〜ン」といった乗り心地が許せないというその気持ち。

私もGLBに揺られながら、これが普通車並みにフラットな乗り味だったらどんなに素晴らしいだろうか、と思いつつ、いやこれは、ちょい古フランス車が石畳を優雅に進むための乗り味に似ているのだと、自分に言い聞かせているのです。

なので、マツダがCX-60の乗り心地を極力フラットにしたかったという気持ちはよく分かります。とはいえ、都会的で上品なしつらえの500万円を超えるDセグメントSUVの乗り味として、低速域の乗り心地をバッサリ切り落としてよいかというと、どうなんでしょう。

たぶんこれが「CX-60じゃなくてRX-60」とか、「CX-60 MAZDA SPEED」とかだったらいいのかもしれません。いやでも、「ビシッ、バシッ」じゃなくて「ブルブルブルブル」だからなあ…

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3. ADASは高速道路専用?

次に、非常に短時間ながら、運転支援機能も試します。現代の新車ではここは欠かせません。CX-60のデジタルメーターにはADASモードもあり、自車とともに、前方や隣車線の車両(画面上は四角いオブジェクト)が表示されます。また、左右後方の車両を検知すると、自車アイコンの斜め後ろに「巛」のようなマークも表示されます。

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それではアダプティブクルーズコントロール、ACCを試してみます。時速を50kmにセットし、前走車に追従。おっ、ステアリングアシストも効いているようです。

ちょっと混んでいますね。前の車が速度を落としました。追従する私のCX-60も減速…

「うわうわうわっ、ここで加速するな!!!」

慌ててブレーキを踏んでACCを解除します。まあ、前の車がちょっと右に寄ってた気もするし、そういうこともあるわな。気を取り直してもう一回。追従して、前車が減速…

「ちょ、なんで減速してる前走車に向かって加速するんだよ。煽り運転かw」

まあ、この2回がエッジケースである可能性も捨て切れませんが、どうもCX-60のACCは一般道では出番がなさそうです。高速道路では普通に効いているという評価ですので、そういうものと割り切った方が良さそうです。GLBのACCも、停止マナーは決して褒められたものではありませんが、やっぱりベンツってよくできてるんだなあ。

4. マツダ CX-60は買いなのか?

ということで、ごくごく短時間の試乗ではありましたが、マツダ渾身のラージプラットフォーム第一弾であるCX-60を濃密に味わうことができました。やはり百聞は一見にしかず、です。

さて、CX-60は買いかどうか、ラージ第二弾であるCX-60の3列版、CX-80がデビューしたとして、GLBから乗り換えるべきなのでしょうか。

うーん、少なくとも、低速域の荒い乗り心地が改善されないと厳しいですね。このネガはあまりにも明白で、大きな騒動になっているようですし、生産を停めているという噂もありますので、近々改良されるのは間違いないと思います。いくら「振動があっても頭が揺れなければ最終的に疲れないのだ」と言われても、トレードオフとして一般に受け容れられるレベルとはとても思えませんからね。

CX-60は299万円〜626万円という非常に幅広い価格設定なのですが、実際によく売れているのは500万円台のモデルだそうです。率直に言うと、500万円以上出してCX-60を買うなら、600万円前後のGLAやGLBを買った方が、総合的な満足度は高いのではないかと思います。

もちろん、CX-60の方がよい点もたくさんあります。スッキリとハンサムなCX-60の内外装の方が好みという方も少なくないでしょう。この価格で3.3リッター直6ディーゼルハイブリッドにFRレイアウトというのも人によって刺さりどころです。さらに、たっぷりふっくらとしたシートに、ステアリングヒーターやシートベンチレーション。そして安心の日本製ナビ。ベンツに600万円、いやそれ以上払っても手に入れられないものが、マツダなら自分のものにできるのです。

しかし、充実で信頼性の高い運転支援(ACC、LKA、自動車線変更その他多数)、緻密で芯の太いステアリングフィール、全体的な剛性感、MBUXをはじめとするデジタル機能では、価格がさほど違わないメルセデスの方が一枚上手です。

「なんでベンツはまともなFFをひとつも作れねえんだ」と常々公言していた激辛評論家にして「Cクラス(先代W205)を超えた」と言わしめた、現行GLA/GLBのコスパの高さは伊達ではないようです。

そのCX-60も、純ディーゼルの2WDだと450万円くらいで、Exclusive Modeというグレードなら、装備もディーゼルハイブリッドとほとんど同じようです。

400万円台であれば、低速の荒い乗り心地を除けば、十分に有りじゃないかと思います。この価格帯だとスバル・アウトバックや日産エクストレイルあたりとの比較になるのかもしれません。

5. プレミアムブランドってそういうことなんだ

最後に、マツダの高級路線、プレミアムブランド化は成功するのかどうか。つまり日系であればレクサスやインフィニティ、海外勢であればベンツやBMW、アウディ、キャデラックなどと対等に比較されるブランドとなり得るのでしょうか。

これは神のみぞ知ることかと思いますが、少なくとも車がちょっと良くなるとか、お店がキレイになるとかとは次元の違う話です。「500万円以上の車を誰が青マツダで買うのか」みたいな議論がありましたが、全店舗黒マツダに改装すればレクサスやベンツを駆逐できるのかというと、そんな訳はありません。

マツダがプレミアムブランドになるというのは、軽自動車や商用車や300万円未満の価格帯のユーザーは全部切り捨てるとか、ロードスターが450万円スタートになるとか、そういうことも含む可能性があるのです。

マツダがそこを目指しているのかどうかは分かりませんが、メインストリームブランドがプレミアムブランドに昇華するというのは、少なくとも10〜20年というレンジで初めて成果が見えてくるような、そんな壮大なスケールの話なのではないでしょうか。

そして、うちのGLBが例えコンパクトクラスのプアマンズBクラスであったとしても、妻が「自分がベンツに乗れるなんて思ってもいなかった」と言うように、その車のハンドルを一切握ることのない人をも惹きつける強烈な磁力を有していることは、疑いようのない事実なのです。

仮にマツダ車が、ベンツより静的動的質感や機能において全方位的に素晴らしかったとしても、いざ買い換えようとすれば強烈な嫁ブロックを喰らうことは想像に難くないことを思うと、メルセデス・ベンツが100年かけて築き上げた牙城の、その城壁の高さと分厚さに、身震いさえ覚えるのです。

そこに挑もうとしてるマツダも偉いけど、やっぱベンツってすげえんだな、と。

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