メルセデスAMG GLB35詳細レビュー『全部載せのハイパワー快速ツーリング3列ファミリーSUV』

みなさまこんにちは。

さて、メルセデスAMG GLB35が納車されておよそ2ヶ月。慣らし運転も終わり、短時間の試乗では分からない車のことがだいぶ見えてきました。

前回はディーラー試乗のレビューをお伝えしましたが、今回はさらに深掘りして、一般道から長距離高速ツーリングまでを走り込んで分かってきたことをまとめました。

あったものが、あるべきものが、ない。

メルセデス・ベンツGLBの値上げが止まりません。前車GLB 200dは2020年夏の発売時には512万円からだったのが、2023年夏のMP202302では637万円に。現車AMG GLB35も2021年の発売当時は737万円だったのが、現在は852万円と、実に15%以上も値上がりしました。そして、今年後半に予定されているマイナーチェンジでもさらなる値上げが確実視されています。

ベンツに限らず国産車でも、モデルチェンジを伴わない純粋な値上げがニュースになったマツダや三菱だけでなく、トヨタだろうと日産だろうと、マイナーチェンジやフルモデルチェンジに合わせて順調に値上げをしています。

そして、価格は上がるのに装備は削られていくのが輪をかけて世知辛いところです。わがAMG GLB35でも、価格上昇にも関わらず削減された装備がたくさんあります。GLB35の納車の日にディーラーでGLB 200dと入れ替えた時に気がついたものだけでも以下のような装備が消えていました。(正確には、ノーマルかAMGかを問わず、GLBのランニングチェンジに伴って減らされていった装備です)

まず、センターコンソール下側を前後に通っていたアンビエントライトがなくなりました。

GLB200dのセンターコンソールのアンビエントライト。青い縦方向のライトの下にもう1本下向きのライトがあり、モードによっては別の色に光る。

後部座席のシート下のドアの開閉に連動して点灯するフットライトもありませんでした。

前席下の2列目用フットライト。てかこんなのあったんだ(上:GLB 200d 下:GLB35)

トランクルームからは、12Vソケット、小物入れのような小さなネット、トランクマット、さらにリアバンパープロテクターが廃止されています。

3枚目上:GLB200dのリアバンパープロテクター。ただ貼られているだけではなく、バンパー側にも窪み加工がされている。仕様変更されたGLB35(3枚目下)。後付けアクセサリーの販売も終了してしまったけど、補修部品としてなら入手できるのかな…?

そして、エアバルブキャップが金属から普通の黒いプラスチック製に変更されていました。

「さすがベンツは金属キャップ!(左:GLB 200d)」と感心していたら、GLB35(右)ではあっさりプラキャップに(´・_・`)

さらに、電子制御系では、アクティブレーンチェンジングアシスト(ALCA)とPRE-SAFEが廃止されています。ALCAは欧州の規制がらみでの削除ですが、PRE-SAFEについては純粋に半導体コストの影響だそうです。

さらに、AMG GLB35、「この値段なら当然ついてるんだよね?」と期待するような装備もついていません。

快適装備では、ステアリングヒーターとシートベンチレーションが装備されず、辛うじてシートヒーターがあるのみ。ステアヒーターとベンチレーションなんて、大して高い部品じゃないし、今どき400万円のマツダ車にだってついてるんですよ。

また、この手の上級仕様車では当たり前の高音質スピーカー(ベンツではブルメスター)もついていません。GLB35のスピーカーは、音を聞く限りでは標準車とまったく同じ物のようです。

「あった装備が消えてしまった」「あるべき装備がついてない」。こうやって改めて列挙してみると憂鬱な気分になってしまいます。ノーマルベンツから数百万円の追い銭を上納してなお装備が減らされてしまうなんて、こんなことがあっていいのでしょうか。いいや、よくない。

GLB35のプロジェクションライト。カッコいいっちゃカッコいいけど、別に役には立たないし、これで3万円なら同じ値段でステアヒーターつけてよ。

AMG GLB35のここがイイ! ①ハンドリング

しかし、メルセデスAMG GLB35には、標準仕様車では決して味わうことのできない素晴らしい体験が用意されています。それもひとつやふたつではありません。

まずはハンドリング。GLB 200dの精密でしっとりした操舵フィールは全然悪くありませんでしたが、お世辞にもハンドリングが楽しいとは言い難いものでした。

それがGLB35ではお世辞抜きに楽しいのです。ステアリングの切り始めの瞬間からフロントタイヤの向きが変わるのがしっかり分かるし、コーナリング中にボディがふらつくこともありません。ハイスピードでも舵がピタッとあたるので、コーナリングがとにかく気持ちいいのです。

峠道に行く必要なんてありません。都内でも狭く緊張が強いられるようなコーナーがありますよね。例えば、目黒の外苑西通りの白金トンネル。50km/h制限の道路は60km/hくらいで流れていますが、GLB 200dでは小刻みな舵角の修正を迫られていました。それがGLB35では狭い車線にピタッと張り付くように走ることができるのです。

この気持ちよさは、さながらモンテカルロのトンネルを駆け抜けている気分です。東京のモナコ。白金モンテカルロ。いやー、気持ちいい!

目黒から広尾に抜ける都道418号線のトンネル区間。道幅が狭いため60km/hでも高速に感じる。左壁面から自然光が差し込み、さながらモナコ・モンテカルロサーキットのトンネル気分が味わえる。

GLB 200dとGLB35のハンドリングがなぜこんなに違うのか。まず、シャシーが全然違います。GLB35はサブフレームだけでなく、ステアリングナックルやフロントコントロールアーム、リアホイールキャリアなどシャシー関連部品の多くが専用品。ボンネットを開ければストラットタワーバーも装備されています。

AMGロゴ付きストラットタワーバー。シートベンチレーションよりも補強パーツが優先されるのがAMG。

そして、サスペンションはノーマルGLBが固定ショックのコンフォートサスペンションであるのに対し、GLB35は電子制御のAMG RIDE CONTROLサスペンション。これは電子制御式ダンパーで減衰力を可変制御するもので、脚の硬さをコンフォート、スポーツ、スポーツ+の3段階に調整できます。

この電子制御ダンパー、速度や路面状況に応じてミリ秒単位で4輪の減衰力を個別に制御しているそうです。私には、何がどう制御されているのかさっぱり分かりませんので、日産でGT-Rの開発責任者を務めた「ミスターGT-R」こと、水野和敏さんのレビューを引用します。

水野和敏(水)「この足はGLAと基本的には変わらないけど、上屋の重さを上手くこなしてるね。これはよくできてるわ」

水「いやー、この車のいいのは後ろ。背が高くても怖くないのは後ろがしっかり粘ってる。完全に水平でロールバランスを持っていけてるから、すごい安心感高いよね」

水「可変制御の使い方がすっごい上手いな。もちろんこれ電子制御ショックだと思う。これ固定じゃないよ。過渡のコントロールを上手くやってるな。今時の電子制御の可変ショックじゃなきゃ、こういう制御はできねえなあ」

編集「電制可変じゃないとこういう風にはならない?」

水「うん、無理。固定ショックじゃ無理」

出典:ベストカー【水野和敏が斬る!!】日独SUV徹底比較 スバルフォレスター&メルセデスGLB35

いやー、なんかすごいんですね。

さらに、GLB35には「AMG DYNAMICS」という設定があり、「ベーシック」と「アドバンスト」の2段階に変更できます。

AMG DYNAMICSについては情報が少ないのですが、一言でいうと「アジリティを増す」機能ということです。具体的には、アドバンストモードでは、主にESP (ESC)でヨーダンピングを抑制するのだとか。つまり、ベーシックモードでは安定性を高めるためにヨー方向の回転を抑える制御がかかっているが、それを抑えることで曲がりやすくする、ということみたいです。

アドバンストに切り替えると、ステアリングがガッシリと重くなるだけでなく、コーナーで切り込むと、確かにボディがより内側に入り込もうとするように感じます。

GLB35のステアリングホイール左下のコントロールスイッチは、ESCやアイストのオンオフなどから任意に選択が可能。写真では上をサス、下をAMG DYNAMICSに設定。

AMG GLB35のここがイイ! ②エンジン

そしてエンジン。AMG GLB35の2.0L直列4気筒エンジンは306馬力という高出力ですが、コンフォートモードで乗っている限り、そんなにパワフルなエンジンとは思えません。

エンジンをかけると聞こえてくるバラバラと乾いた排気音は、AMGらしいスポーティな音質といえます。しかし、街中を普通に流して走る限りは車内に響くエンジン音は静かで、アクセルワークに対しても特にピーキーに反応することもなく、至って普通の感覚です。GLB 200dのディーゼルエンジンと比べればアイドリングが静かで振動も少ないため、1段階上質になった気分です。

GLB 200dは320Nmのトルクを僅か1400回転で発生するディーゼルエンジンで、これでも力不足を感じることはあまりありませんでした。これに対してGLB35のガソリンエンジンは306馬力/5800~6100回転、400Nm/3000~4000回転と、200dと比べれば高回転型。しかし、低速域でのトルク感はGLB35の方が豊かで、街乗りでも極めて扱いやすいエンジンです。

街乗りでは「これは本当にAMGなんだろうか」と思える温和な性質も、「スポーツ+」モードに切り替えてアクセルを踏み込むと、ガラッと変わります。自動制御の排気フラップによって猛々しく響くエギゾーストノートとともに、それはそれは強烈な加速を味わえるのです。

それもそのはず、GLB35の0-100km/h加速は5.2秒で、GLB 200dの9.0秒のほぼ半分なのです。これは、ポルシェ911 GT3の3.4秒やテスラ・モデルYの3.7秒には遠く及びませんが、ポルシェ718ケイマンが5.1秒、ホンダ・シビックタイプRが5.7秒、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIが6.2秒であることを考えると、SUVのGLB35もなかなかの速さです。

もっとも、高速道路の料金所以外で全開加速を試す機会などほとんどありませんが、このパワーは70〜80km/hあたりからの中間加速の伸びにもダイレクトに効いてきます。GLB 35の追い越し加速は爽快で気持ちいいですね。

とはいえ、スポーツとスポーツ+ではシフトチェンジもかなり引っ張ってやかましいので、私のおすすめは、街乗りはコンフォート一択。高速道路では、エンジンのみコンフォートで、サスをスポーツ+、AMG DYNAMICSをAdvancedにすると、快適性と走行性能の程よいバランスを味わえます。

ステアリングホイール右下の走行モード切り替えダイヤル。いかにもスポーツ性が高い装備だが、「S」に切り替えるには左右どちらに回せばいいのか分からず、高いギャンブル性も味わえる。

AMG GLB35のここがイイ! ③長距離ツーリング

そしてAMG GLB35の真骨頂が、長距離ツーリング。

GLB35が納車されてわずか2週間足らずの8月下旬、東京を出発して福井と京都を回る1,200kmの旅に出かけました。愛知までは1年前にGLB 200dで和歌山に行った時と同じルート。いい比較になります。

東京インターから東名高速本線に合流すると、コンフォートモードでも時速100kmへの加速はあっという間。当然加速がいいだけではありません。ステアリングフィールは、GLB 200dよりも格段に遊びが少なくどっしりとしています。「AMG DYNAMICS」の設定をAdvancedに変更するとさらに中心が引き締まり、まるで「センターにロックされているのでは」と思うほど、一切の緩みや抜け感のないハンドリングになります。LKA(レーンキーピングアシスト)に護られているとはいえ、高速域の安定感はGLB 200dとは段違いです。

電子制御サスがもたらす姿勢も終始フラットで、極めて安定しています。低中速では硬さを感じる脚まわりも、高速では実にしなやか。GLB 200dよりも圧倒的に振動が少なく、アンジュレーションで大きく跳ねることもありません。

そして、AMG GLB35の高速走行で私が一番と言っていいほど感銘を受けたのが、減速です。ブレーキの効きがいいという意味ではありません。高速で前走車に追いつき、ACCが自動減速する時です。GLB35が一切ノーズダイブせず、フラットな姿勢を保ちながらスーッと減速していく様子は、まるで新幹線に乗っているかのような感覚なのです。これも電子制御のおかげなのでしょうか。この減速姿勢のフラット感は病みつきになりそうです。

車好きの方であれば、過去に乗っていた車の「グッと来た瞬間」を覚えていると思います。私の場合は、「ホンダ・シティでレカロシートに載せ替えてお店を出た瞬間」「プジョー106で2速全開加速する瞬間」「プジョー308SWの粘っこいステアフィール」そして「プジョー206で『ドーン』という盛大なシフトショックとともに、1速が消えた瞬間」。

これらは何年経っても忘れることのない、脳裏にしっかりと刻まれた記憶の一部です。前車GLB 200dでは、プジョーでは味わうことのできなかった高速安定性やADASにグッと来ましたが、GLB35では、ハンドリング、エンジン性能、脚まわりなど、GLB 200dを遥かに上回る走行性能に打ちのめされました。これはちょっと同じボディの車とはとても思えないな、と。

AMGって走り屋向け(だけ)じゃなかった

新東名から東海北陸道へ。AMG GLB35の高速走行性能に脱帽しながら走っていると、お昼過ぎには500km先の福井に着きました。そこから白山神社や道の駅を巡って、夕暮れにようやく目的地に到着。ここで、ある異変に気づきます。

丸一日運転したのに、体がどこも痛くないのです。前車GLB 200dと今回のAMG GLB35、シートは表皮が人工皮革のDYNAMICAから本革に変わっただけで、形状はまったく同じです。

GLB 200dでは、長時間運転すると主に太ももの裏のあたりがジンジンとしてきて、背中も凝り固まっていました。痛いってほどではないけど、疲れたなあと。ところが、GLB35ではそれがまったくありません。

おそらくサスの違いが効いているのでしょう。GLB 200dのコンフォートサスペンションは柔らかいのでよく揺れます。特に速度が乗った状態でアンジュレーションを乗り越えた時の縦方向のバウンスはそれなりに大きいものがあります。

車体が上下にバウンスすると、乗員の身体は車体の動きとは非同期に上下動します。フワッと浮いた身体は次の瞬間にシートに押し付けられて、シートの座面から「叩かれる」のです。これが長時間続くと疲労につながるし、もも裏にも痛みを感じるようになるんですね。

GLB 200dに乗っていた時は、そんなことは気づきませんでした。「そりゃ200〜300km乗ったら疲れるだろう」くらいの感覚だったのです。実を言うと、GLB 200dで走る新東名、時速120km走行は少し辛いんですよね。120km区間でも110〜115km/hくらいが最適みたいな。それがGLB35だと、+15〜20km/hでもぜんぜん余裕です。そんなに出さないけどね。

いやー、これはノーマルGLBをチューンアップしたなんてレベルではない。AMG GLB35は、標準車とはまったく別の次元の乗り物です。驚いたどころか、もう参りました。降参です。標準モデルとの150万円以上の価格差なんて安いものです。ノーマルベンツに150万円かけてチューンしても、絶対こんなに良くはならないですよ。

AMG GLB35はノーマル仕様と比べて、走る、曲がる、止まるの基本性能が大幅にブラッシュアップされていて、とにかく運転が気持ちいい。それでいて快適性も向上しているので、妻や子ども達からも「揺れなくなった」「車のレベルが上がった」と好評です。

今回、メルセデス・ベンツの標準モデルからAMGモデルに乗り換えてみて、AMGのすごさがよく分かりました。これがベンツのほとんど全ての車種に用意されているんですから、とてつもないことですね。

これがビジネスとして成立しているのは、欧州には「ハイクオリティな高速移動」に対する根強い需要があるということなのでしょう。ベンツだけでなく、BMW には「M」、アウディには「S」や「RS」という形で、やはり標準モデルに対する高性能モデルが幅広くラインナップされているのです。普通の自動車メーカーだったら「ファミリーSUVのスポーツ仕様?標準車より150万円アップ?そんなの売れるわけねえだろwww」と一笑に付されて終わり。せいぜい純正エアロパーツが用意されるのが関の山です。いやドイツすげえな。

もちろん完璧な車などありません。AMG GLB35の欠点は、冒頭に挙げただけでなく、燃費が悪いとか、ロードノイズが大きいとか、低速の荒れた路面ではヒョコヒョコしがちとか、標準車より20cm大きい最小回転半径とか、Eクラス級の価格でBクラス級の質感とか、いろいろありますよ。

それでも、メルセデスAMG GLB35の走行性能から比べれば、小さいことです。「GLBのパッケージングはドンピシャだけど、走りが物足りない」。AMG GLB35は、そんな方にはぴったりなハイパワー快速ツーリング3列ファミリーSUVなのです。もう、ネガなんか全て許せるレベル。

ただひとつ、本革シートが夏場はクソ暑いのにシートベンチレーションがついておらず、もも裏が蒸れ蒸れになってしまうので、600円のメッシュクッションを敷いて暑さを凌がざるを得ない点を除いて。

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