メルセデス・ベンツGLB納車後レビューその3. これがMBUXの実力…だ…!!

みなさまこんにちは。

さて、納車から1ヶ月で1,000kmちょっと走り、前車の走行距離が年間5〜6,000kmに留まっていた私としてはかなりのハイペースの我がメルセデス・ベンツGLB200d。納車後レビューはまだまだ続きます。

今のところトラブルといったトラブルはほとんどありません。幸いなことに、GLB界隈で散見されているDCTやADASセンサー絡みの不具合は発生しておらず、ディーラーの1ヶ月点検でも異常はありませんでした。

あるとすれば冷感時のエンジンの息継ぎと、電動テールゲートの誤作動疑い事案のみで、どちらも走行に支障はありません。これはゴールデンウィーク明けに預けて調べてもらう予定です。

レビュー3回目となる今回は、何かと話題の「MBUX」についてレポートさせて頂きます。車好きの方であれば、メルセデス・ベンツの「MBUX」という名称を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。正式名称は「Mercedes Benz User Experience(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)」で、メルセデスによると「車両の様々な機能をより直感的に操作できるシステム」であり、「自然対話式音声認識や、各機能の使用履歴から音楽や目的地をお客様へ提案するなど、今までにない機能により、お客様にまったく新しいユーザー体験を提供」するということです。

「MBUX=音声認識」というイメージが強いのですが、実際は大型液晶タッチパネルやステアリングホイールの操作ボタン、センターコンソールのタッチパッドなどの操作系を含む、インフォテイメントシステムの総称なのです。

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大型スクリーンだけに気を取られてはなりません。ここに映っているものすべてがMBUXなのです。

■そうは言っても液晶メーターは目玉だ
最近のメルセデス・ベンツ各モデルに共通するコックピットの特徴が、横長の大きな液晶スクリーンです。あたかも1つの大きな画面のようですが、実際には10.25インチのディスプレイが2つ並んでいます。解像度は1920×720ピクセルで200ppiと、自動車用のディスプレイとしてはなかなか高精細な方かと思います。

最近のインストルメントパネルのデザインとしてはかなり斬新なスタイルで、BMWしかりアウディしかり、メインメーターとセンターディスプレイは明確に分離されているのが一般的です。

このコックピットを最初に見た時は「なんだかかまぼこ板をペタッと置いただけのような安易なデザインだなあ」と思いましたし、今でもカッコいいとまでは思いません。しかし、これはこれでシンプルかつ未来的で、水平方向への視線移動も少なく合理的なデザインなのかもしれません。BMWもコンセプトカーで横長スクリーンを出してきましたしね。
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MBUXのスクリーンは左右2画面構成。中央はステアリングホイールで遮られるので、分かれている方がいろいろと合理的です。

右側のメーターパネルディスプレイは、左右と中央の3セクションに分かれています。私は今のところ、左に燃費計、中央にADAS、右に地図を表示しています。どこに何を表示させるかは好みの問題ですが、どこにでも何でも表示できるかというと、そうでもありません。
FullSizeRenderメーター画面。情報量の少ない燃費計を中央に表示しても、ADASは左に表示できません。なんで?

例えば、地図やADAS、瞬間燃費計は右と中央のセクションに表示できますが、左セクションには表示できません。また、スピードメーターは左セクション、タコメーターは右セクションにしか表示できません。

そのため、例えば「ADASと地図と瞬間燃費計を一緒に表示したい」と思っても、これらはいずれも左セクションに表示することができないため、どれか一つは表示できないのです。
また、左側の燃費計(瞬間燃費ではなく、スタート後かリセット後の累積燃費)は、セクションの大きさに対して情報量が少なく、少し寂しい感じがします。ちょっともどかしい感じもしますが、まあ仕方ないですね。
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流行りの地図全画面表示。グリグリ動いてカッコいいけど、実用上の意味があるかというと、そうでもない。

液晶スクリーンの左側はメディアディスプレイ。ナビゲーション画面のほか、車両設定やメディア情報などを表示することができますが、多くの方はナビを定位置にしているのではないかと思います。

車両設定メニューの階層が右に行ったり左に行ったりして少し分かりにくい場合もありますが、概ね直感的に操作できます。
IMG_9022左ディスプレイの右端に表示される運転席側のエアコン温度は、ステアリングホイールに隠れて頭を動かさなければ見えません。これ身長190cmくらいの方は見えるんでしょうか。
■タッチパネルなんて要らなかったんや!
MBUXの物理操作は3系統。ステアリングスイッチとセンターコンソールのタッチパッドに加えて、左側スクリーンがタッチパネルになっています。ステアリングスイッチには小さな黒いタッチパッドがついていて、これを親指でスリスリとさすることでメニューを操作することができます。

ハンドル右側のタッチパッドはメータースクリーン(右画面)、左側のタッチパッドはメディアディスプレイ(左画面)の操作に使用します。タッチパッドの反応は良い、というか良すぎて不意に触ってしまうこともありますが、これはよくできています。
IMG_9019GLBのステアリングスイッチ。黒い四角が極小タッチパッド。右スポークの下はACC操作、左スポークの下は左から通話、音量、音声認識起動とお気に入り表示です。

メディアディスプレイ(左画面)はセンターコンソールのタッチパッドでも操作することができます。タッチパッドでメニューを移動したりクリックすると「トトトッ」という硬めのクリック音とともに、指先にも「ドチッドチッ」という反応を感じるハプティック機能が採用されています。この操作音とクリック感はなかなか気持ちいいですね。
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センターコンソールのタッチパッド。2本指操作で地図を拡大・縮小することもできます。後方のレバーのような突起はパームレスト。動かしても動きません。
ほとんどすべての操作は、このステアリングスイッチとタッチパッド、そして後述する音声認識で賄えてしまうので、左スクリーンのタッチパネルはあまり使う機会がありません。というか、無くてもたぶん困りません。

最近はエアコンまでタッチパネルに統合してしまう車が増えましたが、走行中のタッチパネルの操作は極力避けたいものですし、飲酒運転並みに危険であるとう研究結果も報告されています。メルセデス・ベンツGLBのエアコンは物理スイッチが残されていますし、MBUXの操作系もなかなかよくできていて、素晴らしいですね。

■デキる(風)の音声認識機能
操作性に優れたMBUXはさすがドイツ車、さすが王者メルセデス、と言いたいところですが、問題はここからです。
日本では2018年の4代目Aクラスから鳴り物入りで登場したMBUX。その最大のアピールポイントが自然言語に対応した音声認識機能だったことは記憶に新しいところです。
ところがどっこい、これがまあなんというか、ユーザーインターフェースや車両自体の出来の良さとくらべて、この車最大のツッコミどころなんじゃないかと思うのです。
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「どうぞ、お話ください」って、さも何でもできるように言われるんですけど。
 

MBUXの音声アシスタントについて、メルセデスの公式サイトではこのような機能が強調されています。
「ちょっと暑いんだけど」
「家に電話して」
「ヒップホップのプレイリストをかけて」
「近くの駐車場を教えて」
「今日の天気を教えて」

「ハイ、メルセデス」とクルマに話かけるだけで起動。「ちょっと寒い」「室内をもう少し明るくして」「カフェに行きたい」「駐車場を探して」など、普通の会話のように話しかけるだけで、車両設定やインフォテインメント機能が簡単に操作できます。
「暑い、寒い」や「家に電話する」というのは分かるんですが、一体どこの誰が車に乗ってから駐車場を探したり、今日の天気を調べたりするんでしょうか。どこのカフェに行こうかとか、普通は乗る前に調べるよね。
のっけからズレてる感じがしなくもないんですが、まあ巷の音声認識のアピールポイントって大体この辺りだし、そこは百歩譲ってそういう(車に乗り込んでからフレンチレストランを探し始めるのが通常である)人がいてもいいでしょう。
ただ、MBUXはそもそも音声認識機能の性能がイマイチなんですよね。そのため、指示していないことを勝手に実行されてしまうことがよくあります。

「エアコンを消して」のどこをどう聞き間違えたら「設定温度を最低に」になるのか、まったく理解できません。そして「エアコン」が「アンビエントライト」と認識されてしまう始末。僕ってそんなに滑舌悪いんですかね?一応ネイティブ標準日本語話者なんですが。
そうか、正式名称の「クライメートコントロール」と言えばいいんだなと、「クライメートコントロールをオフにして」と尋ねてみると、なんの相談もなく、新横浜の「日本エマソン株式会社クライメート・テクノロジー事業部」へのルート案内が開始されたりします。新横浜の日本エマソン社には連日のようにメルセデス・ベンツ車が迷い込んでいるのかと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。

さらに、頼みもしない読書灯を勝手につけるくせに、「読書灯を消して」という要望は拒否するという対応をされると、こちらとしてもついカッとなってしまうのです。
このように、MBUXと対話をしているとまるでコントのようなやり取りに付き合わされることが少なくないのですが、仕様上の限界なのかバグなのかその両方なのか、ともかく日本語の音声認識に失敗することが多いのです。

そして、明らかにバグと思われる挙動が、納車から1ヶ月ちょっとという短い間に何度も現れます。

後者のツイートは、登録済みの自宅をアイコンから選択したのに、なぜかお気に入りに登録された別の住所にルートが設定されてしまい、かつ再現性もあるという、明らかなバグです。この現象はお気に入りを削除するまで繰り返されました。

この他にも、「目的地の候補リストで何回『1番』と言っても『2番』が選択される」や、「MBUXが『運転席側の温度を23度に設定します。』と確かに言ったのに、画面表示は24度になっている」など、登場から2年半以上が経過したシステムとは思えないほどのバグを叩き出してしまうのです。

メルセデス・ベンツの有名なブランドスローガンは「The best or nothing(最善か、無か)」ですが、どう贔屓目にみてもベストとは思えない仕上がりのMBUXに触れてしまうと、MBUXとは「Mercedes Benz User Experience」ではなく、「Mercedes Benz User Experiment(ユーザー実験)」の意味ではないかとすら思えてきます。
それがどんなに中途半端なものであったとしても「これこそがベストなのだ」と仁王立ちで自信満々に言い切らなければならないのがドイツ作法であり、ドイツ車というものなのかと思うと、それはそれでなかなか生き難そうな世界だなあと要らぬ心配をしてしまいます。
もちろんMBUXも悪いことばかりではありません。「エアコンをつけて(消して)」ではまったく仕事ができないMBUXも、「送風を停止して」と言えば「送風をオフにします」と答えてくれます。また、「(ルーフの)電動ブラインドを開けて(閉じて)」と言えば、「電動ブラインドをあげます(さげます)」と答えてきっちり働いてくれます。
そんな時は「横向きのブラインドは『上げ下げ』じゃねえだろう」という罵声が出かかるのを喉元でグッと堪え「まあ、結果オーライ…」と評価してあげるのです。
さらに、自宅へのナビゲーションを設定する時は、MBUXに「自宅に帰る」と伝える方がボタン操作よりも断然速いし、近距離でもやたらと有料道路を優先したがるルート案内についても、「一般道優先ルートに変更して」とか「一般道で自宅に帰る」などと伝えれば、ちゃんと一般道でルート案内してくれます。なんだよやればできるじゃん。
なにより、走行中に前方を向いたままハンドルから手を離さずに音声コマンドで操作できるのは、やはり便利で安全なのです。これでMBUXが完璧に仕事をしてくれさえすれば、「ちょwおまwww」などと気が散ることもなくなるし、誰にも「これのどこがベストなのか」などと批判されることはなくなるのでしょう。
もっとも、いくら世界に名だたる高級車メーカーといえども、年間500万台の日本市場における販売台数がわずか6万台前後しかないメルセデス・ベンツに、そこまで求めるのは酷ではないかという考え方もできます。
MBUXは2018年10月に発売された4代目Aクラスで初採用されましたが、2019年の日本におけるMBUX搭載車の割合は約3割だったそうです。これはおよそ2万台になる計算です。その後も新モデルやマイナーチェンジでMBUX搭載車が相次いで登場していますので、2021年前半時点での日本版MBUXの累計出荷台数はおそらく6万〜8万台程度ではないでしょうか。Apple iPhoneの日本での出荷台数が年間1,500万台ほどと言われておりますので、それと比べると遥かに小さな数字です。
しかし、数年前にあれだけ話題になったAppleのSiriやAndroidのGoogleアシスタントを搭載したスマートスピーカーの、おそらく9割以上が充電が切れたまま部屋の隅でホコリをかぶっているであろうことを思えば、推定6万台以上の車載システムが公道上で実装されていることは、誇ってよいことなのかもしれません。
そして、ソフトウェアはバージョンアップを重ねて改善されることが常識であることを思えば、この小さなマーケットおいて、完璧とは言えないまでも輸入車ブランドの中でみれば進んだローカライズをしてくれていることは有難いことのなのでしょう。なにより、日本語を聞き間違えてもルート案内をミスっても、安全性にはまったく問題はないのです。
カーナビの地図に表示される「花粉情報」など日本独自の機能をリリースするのもいいのですが、これが日本独自に割けるリソースがあることの証であるとするならば、こういったPRドリブン的な機能よりも、音声認識機能のブラッシュアップやバグフィックスにより一層のリソースを割いていただければ、ユーザーもよりハッピーになれるというものではないでしょうか。
「バージョンアップ前に比べて日本語音声認識の正確性がX%向上しました」「音声コマンドがY種類増加しました」というリリースも十分アピールにつながると思いますが、いかがでしょうか。

ということで、メルセデス・ベンツのMBUX音声認識機能、課題は山積ながらも、現行世代のメルセデスにとってなくてはならない重要な機能の一つであることは間違いありません。ソフトウェアはユーザーが育てるものです。「こいつどうしようもねえなあ」などと見捨てずに、バグや要望はガンガン販売店やサポートに上げましょう。私たちの小さな声一つ一つが大きな山を動かすのです。そう、あの「GLB 200d AMGラインブレーキキャリパー問題」の時のように。

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