みなさまこんにちは。
さて、前回はわがメルセデスAMG GLB35にADVAN Sport V107を装着するまでのあれやこれやを記しましたが、今回は後編のレビュー編です。
ADVAN Sport V107とは
レビューに入る前に、今回装着したADVAN Sport V107という商品についてみていきまそしょう。
ADVANはヨコハマタイヤ(横浜ゴム株式会社)のスポーツブランドで、およそ50年前の1978年に誕生した息の長いブランドです。1989年には「ADVAN A008P」がポルシェの技術承認を受け、本格的な欧州進出を果たしますが、地球の反対側である欧州のOE市場に、現地に工場を持たない日本のサプライヤーが食い込むのは簡単な話ではありません。
2000年代初頭には、「AVS Sport V102」がアストン・マーティン V12ヴァンキッシュやDB7ヴァンテージに新車装着されるなど、高級スポーツカーへのOE装着を進めますが、どちらかというとニッチな取り組みでありました。当時はフラッグシップスポーツタイヤでも海外向けにはADVANブランドは用いていなかったのです。
2004年にはグローバルマーケティングの取り組みの一環として、ADVANブランドを本格的に海外展開することを決め、「V102」の後継製品として「ADVAN Sport V103」を発売します。V103はベントレー・コンチネンタルGTやポルシェ911カレラ4などに採用され、2007年には、メルセデス・ベンツの「CL 63 AMG」「CL 65 AMG」「ML 63 AMG」の3車種の技術承認を受けるなど、徐々にプレゼンスを拡大していきます。
2011年に発売された「ADVAN Sport V105」も引き続きポルシェ911やパナメーラで承認を受けますが、メルセデスCクラスやBMW X3/X4など、「普通の欧州プレミアムブランド」まで採用が広がったことが大きな特徴です。
ちなみに2015年から5年間、横浜ゴムは英サッカープレミアリーグ「チェルシーFC」のオフィシャルシャツパートナー、いわゆる胸スポンサーを務めました。海外サッカーファンの方は、チェルシーの真っ青なユニフォームに「YOKOYAMA TYRES」と記されていた姿を覚えている方も多いのではないでしょうか。
今では年間120試合ほどプロサッカーを観戦する私も当時はサッカーをまったく観ていなかった、というか関心すらなかったので、「ふーん」くらいにしか思っていなかったのですが、今から思えばすごいことですね。チェルシーは2016-17シーズンにはリーグ優勝を果たします。胸に日本企業の「YOKOHAMA TYRES」と書かれたユニフォーム姿の選手たちがトロフィーリフトをするなんて、どんだけ胸熱なんだと思いますが、当時は全然知りませんでした。

image: Chelsea FC CC BY-SA 2.0
そして、2020年には最新世代の「ADVAN Sport V107」が登場し、欧州ハイパフォーマンスカーへの新車装着がさらに加速します。詳細はヨコハマタイヤのカタログにOEM装着車両の一覧表があります。メルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェやアウディなど広く採用されています。
V107はメルセデスAMG向けにも幅広い車種とサイズで採用されています。興味深いのは、「V107C」や「V107D」など、複数のパターンコードが設定されている点です。


カタログの写真では、V103が3種類、V105は5種類、V107は4種類のパターンコードがあり、よく見るとそれぞれパターンの形状が微妙に違うことが分かります。おそらくOEMごとに「好みのパターン」があるようで、V107Eは主にBMW、V107Dは主にポルシェ、V107CとV107Fは主にメルセデスベンツで採用されるパターンのようです。
拡大写真で見てみると、BMW M2用のV107EとAMG GLB 35/45用のV107Fでは基本的なパターンは同じですが、V107FにあるグルーブがV107Eにはなかったり、グルーブの細かな処理に違いがあることが分かります。


なるほど、OEMの要求仕様に応じて、このように作り分けているのですね。同じV107であっても、目に見えるパターンが違うだけでなく、ベルトやカーカスなどの内部構造も違う可能性があるのです。
そして、2025年6月現在、V107FはAMG GLA35/45とAMG GLB35のみに採用されています。ということは、V107Fはいまのところ、ほぼわがGLB35向けに開発されたタイヤのようなものなのです。これは楽しみじゃないですか。
ADVAN Sport V107F いよいよレビュー
ということで、前置きが大変長くなりましたが、いよいよレビューです。我が愛車メルセデスAMG GLB35は2リッター直列4気筒ターボエンジンで、306馬力というそれなりに高出力を誇ります。締め上げられたサスペンションに加え、シャシーはサブフレームも専用開発。3列7人乗りのファミリーSUVとしては指折りの運動性能です。そのGLB35に装着するヨコハマADVAN Sport V107Fはどのような印象でしょうか。
なお、自家用車でのタイヤ交換前後の評価は極めて難しいことは前もってお伝えしておきます。タイヤの違いを正確に評価するには、同じ車両で同じ気象条件で同じ道路を、それぞれのタイヤを履き替えて走らなければ違いは分かりませんが、残念ながら個人にはそのような機会はほぼありません。
そのため、V107Fに交換する前の直前の印象は、残溝2mmまで減ったズタボロのピレリP Zeroと比較するしかないのです。ピレリの新品の時はこうだったかなあ、と淡い記憶を頼りにするしかありません。あくまでも限られた条件での印象です。
なお、新品タイヤも慣らし走行が必要です。ブリヂストンやヨコハマなどのタイヤメーカーは、「時速80km以下で最低100km以上の距離を走行」「急発進や急ブレーキを避ける」などが推奨されています。そして、コンチネンタルタイヤはなんと走行距離800kmの慣らし走行を推奨しています。800kmはさすがに無理だろ。
今回は、慣らし走行を終えて一般道と高速道路のドライ路面を300kmほど走った印象です。ウェット走行ができたら改めて追記します。
まず、V107Fの一般道での走り始めの第一印象は、すごく静かで滑らかです。ボロボロのピレリと比べれば当たり前なのですが、GLB35の新車の時はこんなに静かじゃなかったような気がするんですよね。滑らかな舗装路はもちろん、いつもの第二京浜のざら目舗装でも明らかに静かになっている気がします。
もっとも、私の車は新車納車から1年後くらいで調音施工(ホイールハウスデッドニング)を実施したので、車内に入り込むロードノイズの状況はだいぶ変わっています。それでもかなり静かな気はするなあ。
ADVAN Sport V107Fは、まるでコンフォートタイヤのように乗り味が滑らかなのも好印象です。ユニフォミティ(真円性)が高い感じがするというか。ユニフォミティを確認する術はありませんので、あくまで印象ですが。それでも、ピレリの時は明らかにもっとゴロゴロとした乗り味だったし、プジョーに装着していたミシュランPrimacyもゴロゴロ感があったと記憶しています。乗り味の滑らかさは、日本製タイヤの特徴なんですかね。
橋脚の段差などを乗り越えた時の当たりは明らかにマイルドです。この優しい感じはいいですね。滑らかでスッキリとしたハンドリングは交差点での旋回も楽しめます。
マイルドな乗り心地と引き換えにフワフワしているかというと、そんなこともありません。速度を上げてもバウンスするようなこともなく、全体的にしっかりとしています。高速走行(100〜120km/h程度)では若干小刻みに跳ねる感覚がある気はしますが、注意深く意識していると気づく、という程度です。
ハンドリングは、ピレリP Zeroと比べると若干緩いかもしれません。ステアリングセンター付近の座りは少しマイルドです。でも決して腰砕けな印象はありません。速度域によっては、P ZeroよりもV107Fの方が若干アンダーステアが早めに出る気がします。偶然にもV107Fの装着直後に高速道路で路上の落下物を避けたのですが、ハンドルの切り戻しのクイックさは少し甘い気がします。制動距離も若干V107Fの方が長い感じはします。
ADVAN Sport V107Fで300kmほど走った印象としては、新車装着のピレリ P-Zero (PZ4)と比べて、ドライ路面でのスポーツ性能は若干劣るものの、静かで滑らかな乗り心地は際立っている印象です。
しかし、同じ車両に対してメルセデスが承認したタイヤなのに、タイヤメーカーによってそんなに違いがあるのでしょうか。同じ性能要求でタイヤを開発しているはずですので、そこまで差が出るとは考えにくいのですが、タイヤの性格の違いをOEMはある程度許容しているということなのでしょうか。
ということで、わがメルセデスAMG GLB35 に装着したADVAN Sport V107F。全体的には概ね満足のいくタイヤです。それほど攻めることのないノーマルベンツだったら非常に向いているんじゃないでしょうか。
では、次にGLB35でタイヤを交換するとしたら何を選ぶか?と聞かれると難しいですね。ハンドリングやブレーキングなどの運動性能は、おそらくピレリP Zeroに軍配が上がるかと思います。でも、ADVAN Sport V107Fの静かで滑らかな乗り心地も捨てがたい。これまで欧州製タイヤばかりを履いてきましたが、日本製もいいですね。
